1から始める数学

数字の1を定義するところから始めて現代数学を築きます。ブログの先頭に戻りたいときは、表題のロゴをクリックして下さい。

0から始める数学(その11)

 現在2022年4月24日8時47分である。(この投稿は、ほぼ4004文字)

麻友「随分早い時間ね」

私「昨日、宝塚の自然数というものを定義し、これはもう、役目を終えたと書いた」

若菜「そうでしたね」

私「でも、宝塚の自然数には、まだ使い道があることに、気付いた。具体的に言うと、新しい自然数の、{1} は、

{1=\{ \emptyset \}}

と、定義された。でも、これの足し算、

{1+2=\{0 \}+\{0,1 \}}

などの定義は、行えていない」


麻友「ちょっと。質問は、いつしても良いのよね」

私「もちろん良いよ」

麻友「集合を書くとき、{\{} とか、{\}} とか、使っているじゃない。それの意味は?」

私「そういう風に、疑問に思ったとき、恥ずかしがらず、質問するのは、とても良いことだ。この、{\{} や、{\}} は、外延記号と言って、

{\{2,4\}}

と書いたら、{2}{4} が入っている集合を、表していることになってる」

麻友「{\{2,4,6,8,\cdots\}} と、書いたりもするじゃない」

私「そう。正の偶数の集合みたいに、無限個、元がある場合、そういう書き方もする」

若菜「どうして、外延(がいえん)って、言うんですか?」

私「これ、extension の訳語として、哲学者西周(にし あまね)が造った言葉で、例えば、金属という概念の外延は、金、銀、銅、鉄、みたいに、概念を構成するものを、具体的に全部挙げるということなんだ。これの逆は、内包(ないほう)と、言い、具体的に全部を挙げたりせず、共通の性質、つまり上の例なら、金属と、言うことなんだ」

若菜「そうすると、数学では、外延にも、内包にも、外延記号を使っているということですか?」

私「実は、そうなんだ」


結弦「また、抽象的な話になっちゃって。問題を解こうよ」

私「そうだったな。問題持ってこよう」

結弦「分数は、まだ定義してない。でも、上の6問は、解ける」

私「ここで、宝塚の自然数が、使えるんだ」

麻友「これを、やりたかったのね。トレーニング3の(1)は、

{(+6)+(+2)} で、{(+6)}は、{6} のことだから、{6=1+1+1+1+1+1} よね」

若菜「{(+2)}は、{2}だから、{2=1+1} ですね」

結弦「それで、{(+6)+(+2)=6+2=1+1+1+1+1+1+1+1} だ」

麻友「{1+1+1+1+1+1+1+1} の省略記号は、{8} だから、

{(+6)+(+2)=+8}

が、答えよ。あらっ、太郎さん。プラスを付けてない」

私「{+8} なんて、プラスを付けるのは、中学生か、特に、符号に意味を持たせたい場合だけだよ」

若菜「特に符号に意味を持たせたい場合って?」

私「例えば、{-(-8)=+8} みたいに、『本当にプラスだぞ』と、強調したいときとか」

若菜「あー、なるほど」

麻友「そうすると、{(+3)+(+8)=11} でも、{(+3)+(+8)=+11} でも、いいわけね」

私「うん」

結弦「(3)は、自然数から、はみ出している」

若菜「整数に、守備範囲を広げないと」

麻友「宝塚の自然数は、整数を、定義できてる」

若菜「座標を使うんですよね。どうして、座標の集合による定義のとき、


 定義 46 順序対

 順序対(座標)は、{(x,y)} を、

{(x,y)=\{\{x\},\{x,y\}\}}

という集合と、定義する。

 定義 46 終わり


と、順序対(じゅんじょつい)と言ったのですか?」

私「説明しなかったけど、

{\{a,b\}}

という集合は、非順序対(ひじゅんじょつい)と言うんだ。{a} と、{b} を交換しても、集合として同じだから、順序に拘らない対という意味なんだ」

結弦「{\{3,7\}=\{7,3\}} ということ?」

私「そういうことだ」

麻友「だとすると、順序対の方は、{(3,7)\neq (7,3)} ということなのね」

結弦「座標だったら、当然だけど」

若菜「{(a,b)=(c,d)} なら、{a=c} かつ、{b=d} でなければ、ならないはずです」

私「定義に戻って、確かめてごらん」

若菜「{(a,b)=(c,d)} とします。定義により、

{(a,b)=\{\{a\},\{a,b\}\}}

{(c,d)=\{\{c\},\{c,d\}\}}


です。左辺同志が等しいので、右辺同志も等しく、

{\{\{a\},\{a,b\}\}=\{\{c\},\{c,d\}\}}

です」

若菜「ここから、まず、{\{a\}} と、{\{c\}} が、等しかったとします。そうすると、2つの集合が等しいということは、中身が等しいということですから、{a=c} です。このとき、{a=b} ならば、左辺は、{\{\{a\},\{a,a\}\}=\{\{a\},\{a\}\}=\{\{a\}\}} となり、元は1個です。右辺は、{a=c} ですから、{\{\{c\},\{c,d\}\}=\{\{a\},\{a,d\}\}} です。左辺と比べると、

{\{\{a\}\}=\{\{a\},\{a,d\}\}}

です。元の個数が、1個ということは、{d=a} の場合しか有り得ません。よって、{\{a\}} と、{\{c\}} が等しいときは、{a=b} ならば、{a=b=c=d} で、特に、{a=c} かつ {b=d} です」

若菜「次に、{\{a\}} と、{\{c\}} が 等しいけれども、{a=b} ではないとします。この場合、{\{a\}} と、{\{a,b\}} は、異なります。特に、前者は、元を1個持ち、後者は、元を2個持ちます。よって、等号が成り立つ以上、{\{a\}=\{c\}} と、{\{a,b\}=\{c,d\}} でなければ、なりません。前者から、{a=c} が、そして、{a} と、{b} が、異なるので、元の個数から、{c} と、{d} も、異なり、それより、後者から、{b=d} が、分かります。

若菜「最後に、{\{a\}} と、{\{c,d\}} が、等しかったとしてみます。元の個数が、1つのはずですから、{a=c=d} でなければなりません。このとき、

{\{\{a\},\{a,b\}\}=\{\{c\},\{c,d\}\}}

は、

{\{\{a\},\{a,b\}\}=\{\{a\},\{a,a\}\}}

となってますから、

{\{\{a\},\{a,b\}\}=\{\{a\},\{a\}\}}

で、

{\{\{a\},\{a,b\}\}=\{\{a\}\}}

と、なります。元が1個であるためには、{b=a} でなければなりません。

よって、{a=b=c=d} であり、特に、{a=c} かつ、{b=d} です。

 以上で、

{\{\{a\},\{a,b\}\}=\{\{c\},\{c,d\}\}}

の、すべての場合に、

{a=c} かつ {b=d}

であることが、証明されました。証明終わり」

結弦「お姉ちゃん、大丈夫?」

若菜「お父さん、引き取ってくれないんだもの」

麻友「かなり、衰弱してるわね。太郎さん、こんな長い、論理だけが頼りな証明、読んでて分かってるの?」

私「これくらいの証明が、普通にできないようじゃあ、ブルバキなんて読めない。鍛えるために、止めなかった」

麻友「ミルカさんって、そんなのに、耐えられる人なの? 私、願い下げよ」

私「数学の醍醐味は、証明が、完全に終わったときの達成感なんだけどなあ」

結弦「でも、そんなの、1日で、終わらないでしょ」

私「私に取って、ゲーデルの第一不完全性定理の証明は、ほぼ1年かかって、登攀した」

麻友「慣れるものなの?」

私「完全に、慣れの問題だよ」

麻友「いずれにせよ。今日は、ここまでにして」

私「分かった。バイバイ」

結弦「バイバイ」

麻友「バイバイ」

若菜「証明、完成してるわよね・・・」

 現在2022年4月24日15時22分である。おしまい。