1から始める数学

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現代論理学(その38)

 現在2022年8月13日8時50分である。(この投稿は、ほぼ7794文字)

麻友「太郎さん。8月9日に、ドラえもんのブログで、連分数を、計算するまで、2つのウィンドウを、並べて、一方を見ながら、他方に書き取ることができること、知らなかったの?」

私「一方に、フォーカスを当てると、もう一方が、隠れちゃうと、思ってた」

結弦「20世紀の人間だよ。今、21世紀になって、22年も経ってるのに」

若菜「一方から他方へ、書き取るとき、どうしていたんですか?」

私「タブの使い方は、知ってたんだ。だから、コピペで、移していたんだ。或いは、一方のを覚えて、記憶を頼りに、他方に書くとか」

麻友「それが、ウルフラムアルファで、計算した、{\sqrt{3}} の値なんかを、覚えきれなくて、ウィンドウを、2つ立ち上げて、並べる方法を、探したのね。マニュアルを見た?」

私「『ウィンドウを並べるには?』と、ググった。他のウィンドウにしたいタブを長押しして、『タブを別のウィンドウに移動』を、タッチ、タスクバーの空いているところを長押しして『ウィンドウを左右に並べて表示』を、タッチすると、ウィンドウが、並ぶ」

麻友「太郎さん、Windows 1 使ってたんじゃない?」

結弦「単数なら、Window 1 だ」

若菜「あんまり、いじめると、反撃されるわよ」


私「『帝国の逆襲』だ。前回『現代論理学(その37)』で、重要なことを、やった。覚えているかな?」


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麻友「そうすると、

{p_1 \Rightarrow p_2, p_1 \longrightarrow p_2}

は、

{((p_1 \Rightarrow p_2) \wedge p_1) \Rightarrow p_2}

と、ひとつの論理式になる」

若菜「でも、変だと思いません? {\Rightarrow} は、真偽表で、定義されたものでした。でも、{\longrightarrow} は、『よって』という推論の式のものでした。それを、同じものにしてしまうなんて」

私「矢印が出て来るたびに、悩んだ。この矢印のジレンマを解消してくれたのは、ブルバキだった。{\vee\neg} を、{\Rightarrow} と表す。つまり、{(\neg A)\vee B} を、{A \Rightarrow B} と表すと、定義して以来、一度として、他の矢印を、使わない。結局、ひとつで良かったのだと、安心した。ただ、他の本を読むときは、その本に従わねばならない」

結弦「この場合は、 {\longrightarrow} は、{\Rightarrow} で、定義されているということ? それで、これが、正しいというのは、どういうときなの?」

麻友「トートロジーでしょ」

若菜「あっ、真偽表か」


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                       (『現代論理学(その37)』より)

私「ここまで、分かっているかな? いくつかの仮定(例えば、{(p_1 \Rightarrow p_2) } と、{p_1} )から、1つの結論(この場合、{p_2} )が、得られるということを、考える。まず、{(p_1 \Rightarrow p_2)} と、{p_1} の両方ともが、真のときのみ真である、{((p_1 \Rightarrow p_2) \wedge p_1)} という命題を考える。この仮定 ({((p_1 \Rightarrow p_2) \wedge p_1)}) が、真であるとき、結論が、偽だったら、成り立たず、仮定が、真であるとき、結論も、真であったら、成り立つ。そして、仮定が、偽だったら、結論は、真でも偽でも良い、ということを、表したい。それを、{\Rightarrow} という論理記号を、用いて、{((p_1 \Rightarrow p_2) \wedge p_1) \Rightarrow p_2} と、ひとつの論理式で、表した。そして、これがトートロジーなら、この推論は、正しいとするんだ。これが、トートロジーという体系だ」

麻友「この後、実際に真偽表を、埋めていったのよね」

私「ついてこられていた?」

若菜「{1} と、{0} が、チラチラして・・・」

私「落ち着いて、ひとつひとつ入れていってごらん」


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麻友「トートロジーでしょ」

若菜「あっ、真偽表か

{((p_1 \Rightarrow p_2) \wedge p_1) \Rightarrow p_2}
{~~~1~~~~~~~~1}

とやって、

{((p_1 \Rightarrow p_2) \wedge p_1) \Rightarrow p_2}
{~~~1~~~~~~~~1}
{~~~1~~~~~~~~0}
{~~~0~~~~~~~~1}
{~~~0~~~~~~~~0}

で、この後どうすれば、いいのかしら?」

麻友「他にも、{p_1} や、{p_2} がある。

{((p_1 \Rightarrow p_2) \wedge p_1) \Rightarrow p_2}
{~~~1~~~~~~~~1~~~~~~~~1}
{~~~1~~~~~~~~0~~~~~~~~1}
{~~~0~~~~~~~~1~~~~~~~~0}
{~~~0~~~~~~~~0~~~~~~~~0}

とできる」

若菜「あっ、そうか、

{((p_1 \Rightarrow p_2) \wedge p_1) \Rightarrow p_2}
{~~~1~~~~~~~~1~~~~~~~~1~~~~~~~~~~~1}
{~~~1~~~~~~~~0~~~~~~~~1~~~~~~~~~~~0}
{~~~0~~~~~~~~1~~~~~~~~0~~~~~~~~~~~1}
{~~~0~~~~~~~~0~~~~~~~~0~~~~~~~~~~~0}

なんだ」

結弦「ここから、論理記号の下に、◯✕付け始める。

{((p_1 \Rightarrow p_2) \wedge p_1) \Rightarrow p_2}
{~~~1~~~1~~~~1~~~~~~~~1~~~~~~~~~1}
{~~~1~~~0~~~~0~~~~~~~~1~~~~~~~~~0}
{~~~0~~~1~~~~1~~~~~~~~0~~~~~~~~~1}
{~~~0~~~1~~~~0~~~~~~~~0~~~~~~~~~0}

恐ろしい」

麻友「どうかな。

{((p_1 \Rightarrow p_2) \wedge p_1) \Rightarrow p_2}
{~~~1~~~1~~~~1~~~~1~~~1~~~~~~~~~1}
{~~~1~~~0~~~~0~~~~0~~~1~~~~~~~~~0}
{~~~0~~~1~~~~1~~~~0~~~0~~~~~~~~~1}
{~~~0~~~1~~~~0~~~~0~~~0~~~~~~~~~0}

うん」

若菜「ロシアンルーレットなんて、心臓に悪いですよ。

{((p_1 \Rightarrow p_2) \wedge p_1) \Rightarrow p_2}
{~~~1~~~1~~~~1~~~~1~~~1~~~1~~~1}
{~~~1~~~0~~~~0~~~~0~~~1~~~1~~~0}
{~~~0~~~1~~~~1~~~~0~~~0~~~1~~~1}
{~~~0~~~1~~~~0~~~~0~~~0~~~1~~~0}
{~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~\uparrow}ココ

うわっ。前件が真で、後件も真なら、{\Rightarrow} は、真。一方、前件が偽(つまり、{0} )なら、常に真(つまり、{1} )だから、全部、『ココ』のところに、{1} が、並んで、トートロジーです」


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                       (『現代論理学(その37)より)

麻友「ここまでで、3736文字。そんなに書いたかしらね?」

私「{\TeX}のコードを打つと、もの凄く、文字数食うんだ」


若菜「『現代論理学』の本文は?」

私「こう続く、


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 以下に,今後しばしば用いられるトートロジーを一括して掲げておこう.これらが恒真式であることは,(今の場合)実際に真理値を計算することによって確かめられる.({A,B,C} は任意の論理式を表わす.)

1){A \Rightarrow A,A \equiv A} 同一律(law of identity)

2){A \vee \neg A} 排中律(law of the excluded middle)

3){\neg (A \wedge \neg A)} 矛盾律(law of contradiction)

4){\neg(\neg A) \equiv A} 二重否定律(law of double nagation)

5){A \wedge A \equiv A} 連言の巾等律(idempotent law)

6){A \wedge B \equiv B \wedge A} 連言の交換律(commutative law)

   ・
   ・
   ・


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           (『現代論理学』p.11 より)

と、26番まであるのだけど、今すぐ26番まで必要ではない。追い追い、使わなければならないとき、真偽表書いて、証明するので良いと思う」

麻友「そうだとすると、これは、証明しろと?」

私「いや、真偽表を使うというのは、いよいよ、どうしようもなくなったときには、そういう手があるよ、というだけで、もっと、便利でコンパクトな手も、あるんだ。そうは、言っても、上の式は、どれも、当たり前だと思えるだろう?」

若菜「排中律とか、二重否定律とかって、直観主義論理では、正しくなかったと思います。このトートロジーという体系は、古典論理なのですか?」

私「高校3年生で、その質問ができれば、数学科でも、優秀な学生だ。生化学へ行ってしまうのは、もったいないくらいだ」

結弦「直観主義論理にも、推論式みたいなものを、考えられるの?」

私「考えられる。{\mathbf{LJ}} というもので、そこでは、

{p_1 \longrightarrow \ p_1}

から、

{ \longrightarrow p_1 ~\neg p_1}

みたいに、仮定なしに、{p_1 \vee \neg p_1} が、証明できそうになるのだけど、{\mathbf{LJ}} では、右辺に、論理式を2つ以上持って来てはいけない、というルールがあり、排中律は、証明できないんだ」

若菜「直観論理は、嫌い?」

私「古典論理にも、推論式みたいな、シークエントというものを扱う、{\mathbf{LK}} というものが、あるんだけど、推論の構造を調べるのには、便利なんだけど、実用的でないのね。私は、直観論理も、その{\mathbf{LK}} で、右辺に2個論理式を持ってこないものを、{\mathbf{LJ}} とすると、習ったんだけど、実用的でないから、大っ嫌いだった」

麻友「転機が?」

私「{\mathbf{LK}} を経ずに、{\mathbf{NJ}} という自然な推論の直観主義論理バージョンを知って、見方が変わった。ただまあ、正しい、正しくない、の古典論理の方が、平和だよ」

結弦「まず古典論理では?」

私「{A} というのを、『{A} が成り立っている』とする。そして、{A} の否定、つまり{\neg A} が、『{A} が成り立たない』とする。これで済むので、気持ちが楽だ」

結弦「直観主義論理では?」

私「{A} というのを、『{A} を確認する方法を持っている』とするので、その否定 {\neg A} が、『{A} を確認する方法を持っていない』という消極的なもので、済ますわけに行かなくなる。『{A} を確認できない』または、『{A} を確認できないことを確認する方法を持っている』とか、『{A} を確認する方法を持っていない、というばかりでなく、もし {A} を確認する方法を手にしたら、あらゆることを確認する方法を作る方法を持っている』ということに、なるのだ」


若菜「変な論理かも知れませんが、{\mathbf{NJ}} で、証明できたものは、全部、{\mathbf{NK}} で、証明できるんじゃなかったでしたっけ」

私「ああ、そうだな。{\mathbf{NK}} で、証明できることを、目指しているんだから、{\mathbf{NJ}} なんて、放っておいて良いんだな。若菜、良いこと言った。ありがとう。そういえば、ハーパーの『生化学(第32版)』原書が8月5日に発売されたぞ。それと、杉山忠一『英文法詳解』7月28日に復刊されたぞ」

若菜「この1万2千円もする洋書は、なかなか、手が出ません」

結弦「その英文法の本は、良い本なの?」

私「大学から帰ってきた後、買って、読み始めたが、かなりレヴェルが高いと感じた。結弦は、英検2級で、会話はできるけど、文法が苦手というから、丁度良いかも知れない」

結弦「文法書として、どうなの?」

私「10年前くらいに、ひとつも誤りのない参考書として、取り上げられた書なんだ」

結弦「いくら?」

私「2,640円」

結弦「お母さんに、買ってもらおうかな」

私「単語は、決して難しくない。ほとんどの文法の説明に、1つ以上の例文を付けて、丁寧に説明している。『こういう場合は、こういう訳語を当てる』というような指導もしてくれる。流暢な英語がしゃべれて、文法も完璧だったら、無敵だ」

若菜「ハーパーの『イラストレイテッド生化学』という本は、訳本がありますね」

私「これだろ、

第30版だ」

若菜「これだと、8,690円なんですが」

私「これでも、高いけど、いずれにせよ、学問をやるには、お金がかかる。ところで、英語の本でいきなり生化学を学ぶ自信がないのなら、もう第7版の原書が出ちゃってるけど、『細胞の分子生物学(第6版)』の訳本、私のを、貸してあげても良いよ。『細胞の物理生物学』と、どっちか、貸してあげるよ。私は、化学だ。生物学ではない。と、言い張るかも知れないけど、それだったら、

は、どうだろう。出だし、高校の化学より凄く難しいと思うだろうが、第1章を、日本語だからということで、読めば、後は、同じようなことの繰り返しで、分からないことはない」

若菜「そんな大学の教科書を?」

私「じゃあ、裏技が、いっぱい書いてある

は、どうかな?」

若菜「どんな、裏技?」

私「高校の化学、こんな風に教えてくれれば、分かったのに、ということが、いっぱい書いてある」

若菜「いずれにしても、今は、物理と数Ⅲに、集中しなければ、ならないの」

私「大学に、入ってからのことまで、考えられないか。じゃあ、麻友さんとのゼミは、大学レヴェルだから、いつもの若菜と結弦に、戻って」

若菜・結弦「はーい」


麻友「太郎さん。本当に、高い本、持っているのね」

私「全部で、50万円は、かけてる。いずみ野で捨ててきた本を合わせると、80万円くらいだな」

麻友「それを、一生かかっても、読めないなんて」

私「いっとき、認知症の兆候があると、騒いでいたんだけど、そのこと自体忘れてしまった。前から知ってたんだけど、数学セミナーの8月号が、『公理という考え方』という特集をしていて気になってたのね。それで、一昨日(8月11日)、もし鶴見のCIALのくまざわ書店に、残ってたら、内容確認して買おうと思って、行った。棚に行くと、1冊、あった。数学セミナーの9月号は、8月12日発売だったから、最後の日だった。内容も、望んでいたこと、選択公理、巨大基数の公理、物理学の公理化、様相論理、などが書いてあったので、現在の正常な数学者が使っている、数学の公理を知るために、買ってきた」

麻友「いくらだった?」

私「1,199円」

麻友「まだ、買っているのか」

私「本当の論文に、手を出しにくい私にとって、数学セミナーは、最新の数学に触れる良い媒体なんだ」

麻友「今日は、朝、『熱力学』やって、このブログ書いて、新聞届けて、疲れたでしょう。もう21時15分だわ。終わりにしない? 久し振りに『現代論理学』が、進んだわね」

若菜・結弦「おやすみなさーい」

私「おやすみ」

麻友「おやすみ」

 現在2022年8月13日21時19分である。おしまい。