1から始める数学

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現代論理学(その29)

 現在2021年7月1日17時53分である。(この投稿は、ほぼ4979文字)

私「『現代論理学』と、『数学基礎概説』は、どちらも、ちょっとずつ進める。差し当たって、今日は、『現代論理学』だ。前回、3人が若いということで、論理学の『{\supset}』を、『{\Rightarrow}』に置き換えることを、今後も続けることになった。前回のことを、思い出しながら、以下を見て欲しい」


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安井邦夫『現代論理学』(世界思想社


の、8ページの5行目から」


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 ところで,われわれは上にとりあえず5つの結合子を採用したが,真理関数という観点から見れば,これらの結合子は互いに還元可能である.つまり次のような等式が成立する.〔この場合,等号 {=} は,左辺と右辺の論理式が({A,B} に任意の真理値を与えた場合に)常に同一の値をとることを表している.〕

{(A \equiv B)=\{(A \Rightarrow B) \wedge (B \Rightarrow A)\}}     (1)

{(A \Rightarrow B )=(\neg A \vee B)}            (2)

{(A \Rightarrow B )=\neg (A \wedge \neg B)}           (3)

{(A \wedge B )= \neg (\neg A \vee \neg B)}           (4)

{(A \wedge B )= \neg (A \Rightarrow \neg B )}           (5)

{(A \vee B )= \neg (\neg A \wedge \neg B)}           (6)

{(A \vee B )= ( \neg A \Rightarrow B )}            (7)


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{(A \equiv B)=\{(A \Rightarrow B) \wedge (B \Rightarrow A)\}}     (1)

1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

1 0 0 1 0 0 0 0 1 1

0 0 1 0 1 1 0 1 0 0

0 1 0 0 1 0 1 0 1 0
私「↑ココ        ↑ココ

この2箇所が、どの場合にも、同じになっているでしょう。だから、左辺と右辺の論理式が({A,B} に任意の真理値を与えた場合に)常に同一の値をとるわけで、こういう場合、等号で結ぶことにした、というわけなんだ。少なくとも、(1)に関しては、{A,B} に任意の真理値を与えた場合に、常に同一の値を取っているでしょ」


若菜「うーん。なんか、変ですね。なぜ、それを、{\equiv} と、書いては、いけないのでしょう」

麻友「私も、そう思った。真偽が一致するのが、{\equiv} の同値でしょう」

私「そのことでは、私も、随分頭を悩ませた。だが、数学が分からないときに、取るべき手段というものが、いくつかあるのだが、そのいずれもが、手を動かすことなんだ。まず、


(1)そこで使われている記号の定義を、確認する。なるべくなら、定義を、書き写す。

(2)何かを代入できる変数があるのなら、それに、具体的な数か、何かを、いくつか、代入してみる。その場合も、なるべくなら、頭で考えているだけでなく、手で書いてみる。

(3)分からない式自体を、ノートに、書き写してみる。

(4)分からないのが、式や数でなく、何か名前の付いている概念の場合、その分からないものが、何かに対して、働きかけて、それが、別なものを、生み出している場合、それは、広い意味で、関数とか、写像と、呼ばれるものだから、どういうものから、どういうものを、生み出しているかを具体的に探って、関数とか、写像として捉える。

(5)ここまで、やっても、駄目な場合。私には、実際そういうものが、ありました。ホモロジー代数とか、圏論と言われるものでした。大学1年生(1991年)から、ずっと分からなくって、2020年になって、『圏論の歩き方』という本を見ていて、今までの知識が結びつき合って、分かったのです。


(5)までやらなくてもいいですから、(1)~(4)まで、試して見て下さい」




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結弦「結局、等号『{=}』と、同値『{\equiv}』の、違いは?」

私「上に、『数学が分からないときに、取るべき手段』というものを、5つ書いたのだが、実はもうひとつあるんだ」

若菜「どんなの?」

私「上に挙げたものは、どれも手を動かすものだ。次のものは、ちょっと違う。分からないことがあるとき、取り敢えずそれは認めることにして、先に進んじゃうという方法」



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分からない言葉にぶつかったとき、取り敢えず『そういうものが、あるんだ』と、思って先に進むのも、ひとつの方法

より抜粋。

若菜「お父さんは、マヤのように、そういうなにかが、あると、思うだけで、進める人。でも、何かを理解するときに、徹底的に拘るところは、亜弓的。お父さんは、主に数学ができない人に、『もうちょっと辛抱強く、数学の本を読んでみろ』と、言いたいのかも知れませんね」

私「小説じゃないんだから、読むだけで分かるわけないよ。ノートとシャーペンを、用意して、定義を写したり、式変形や、計算を、自分でやってみなきゃ」

結弦「お父さん、十分努力してるんだな」

私「『辛抱強く、数学の本を、読んでみろ』というのと平行して、ある本で躓いたから、数学は駄目だ、と思わない方がいい。『同じことを、もっと易しく書いた本が、大抵の場合ある』というのは、肝に銘じていた方が良い」


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          (相対論のブログの『分からない言葉にぶつかったとき、取り敢えず『そういうものが、あるんだ』と、思って先に進むのも、ひとつの方法』という投稿より)


若菜「ああ、こういうこと、相対論のブログでありましたね」

麻友「そうすると、等号『{=}』と、同値『{\equiv}』の、違いは、今は分からないまま、先に進んだ方が、良いというの?」

私「もうちょっと、先に進んで、トートロジーというものを、学んでから、考えた方がいい」

若菜「じゃあ、(2)~(7)も、保留で、先に進んでみましょう」

私「復習も含めて、8ページの10行目から、



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{(A \equiv B)=\{(A \Rightarrow B) \wedge (B \Rightarrow A)\}}     (1)

{(A \Rightarrow B )=(\neg A \vee B)}            (2)

{(A \Rightarrow B )=\neg (A \wedge \neg B)}           (3)

{(A \wedge B )= \neg (\neg A \vee \neg B)}           (4)

{(A \wedge B )= \neg (A \Rightarrow \neg B )}           (5)

{(A \vee B )= \neg (\neg A \wedge \neg B)}           (6)

{(A \vee B )= ( \neg A \Rightarrow B )}            (7)


 これらの等式を見ると,たとえば(6)により,{\vee} は、{\neg}{\wedge} とで定義可能である。また(3)により,{\Rightarrow}{\neg}{\wedge} とで定義可能であり,さらに(1)により,{\equiv}{\Rightarrow}{\wedge} とで(したがって {\neg}{\wedge} とで)定義可能となる。したがって,{\vee,\Rightarrow,\equiv} の3つの結合子はすべて {\neg}{\wedge} とで表現できると言える.同様に,{\neg}{\vee} とで他のすべての結合子を表現することができ,また {\neg}{\Rightarrow} の組合せでも他のすべてを定義しうる.こうして若干の結合子を基本記号として置き,他の結合子を派生記号とみなせば,結合子の数を絞ることができる.しかし,他方では,結合子の数を切りつめればそれだけ論理式の表現が長くなり,論理式の意味の読み取りが困難になるということもある.したがって,その点の考慮も必要であり,以下しばらくは,上の5つの結合子を用いることにする.(のちのⅠ-Ⅲでは,{\neg}{\Rightarrow} を基本記号とする体系をとりあげる.)



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                  (『現代論理学』8ページ下まで)


結弦「上の(1)~(7)を、認めると、論理記号が、絞れるんだな。前にも似たようなことを、やったな」

私「ブルバキが、{\vee} と、{\neg} だけから始めているというようなことを、書いたかもな」

麻友「等号『{=}』と、同値『{\equiv}』の、違いは、余り分からないけど、等号の両辺が、同じとするなら、{\neg}{\vee} とで他のすべての結合子を表現することができるっていうの、なんとなく分かるわね。ブルバキも、それに立脚してるのか。太郎さんが、ブルバキやるのに、『現代論理学』やっておくと良いと、言ってた理由、少し分かった」

若菜「そもそも、なんで、記号論理学なんて、やらなければならないの? という感じでしたが、お父さんに騙されて、かなり記号論理学に、踏み込みましたね」

私「ここから、どんどん、計算みたいに、手を動かして、式を書く作業が、始まる。手を動かすことを厭わず、『正しい』とはどういうことか? 身をもって、感じ取って欲しい」

麻友「数学において、私に取って、正しいとは、どういうことかね」

私「そうだ」

結弦「恐ろしー」

若菜「あの2人には、付いて行かれませんね」

私「次のセクションは、トートロジーだ。楽しみにしてて」

若菜・結弦「おやすみなさーい」

麻友「おやすみ」

私「おやすみ」

 現在2021年7月1日21時35分である。おしまい。