1から始める数学

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現代論理学(その37)

 現在2022年5月8日15時34分である。(この投稿は、ほぼ7033文字)

麻友「太郎さん。昨日、コンパスと定規で、正五角形作図してって、言ってたわね。『正五角形 書き方』と、ググったら、出てきた。でも、太郎さんが浪人中なんて、インターネットは、なかった。どうして、作図法、知ってたの?」

私「今でもあるかどうか知らないけど、私の頃は、中学で技術家庭科という教科があった。女の子は、調理や裁縫を習い、男の子は、製図やラジオの作り方、などを習った」

若菜「もの凄い、男女差別ですね」

私「でも、私が本で調べて、これは難しそうだと思って、先日の法子さんに、調理中、大根が出てきたとき、『『かつらむき』というのがあるそうですね』と言ったら、『こうやるんですよ』と、指を怪我することもなく、スーッスーッスーッと、剥いて見せてくれた。女の人で、かつらむきもできないなんて、恥ずかしい。それくらいに、女の人は、鍛えられているんだな。と、驚いたものだった」

麻友「かつらむきか」

若菜「お母さんも、『自分で空揚げ、揚げちゃった』という記事もありましたが」

麻友「どんなに、男女平等と言っても、女の人が、料理もできないようじゃ、と言われる。太郎さんは、決して、頭が古いわけではないけど、これは、どうすることも、できない」

私「中学に入って、男の子は、技術のために、三角定規と、コンパスを、買いなさいと、言われた。だが、私は、父と母に、コンパスは、お父さんの西ドイツ製のものを、借りて使うから、三角定規は、学校指定のものではなく、横浜の有隣堂で売っている、ちゃんとしたものを、買って欲しいと、言った」

結弦「『コンパスは、お父さんのを、使うから、三角定規は、学校指定のものを、買って』じゃないの?」

私「私は、後で、母が買ってきてくれた、三角定規を、学校指定のものと比較した。学校指定のものは、厚さが2mmなのに対し、有隣堂のは、厚さ3mmだった」

麻友「それで、西ドイツ製のコンパスというのは?」

私「父が、言ってたのだ。昔は、図面を描くとき、全部手で描くから大変だった。だから、コンパス、デバイダーの他にも、それらを、インクで描けるようにするものとか、コンパスを延長するものとか、色んな補助の部品がある。だけど、お父さんは、他の全部を買えるくらいのお金で、このコンパスとデバイダーだけを、買ったんだ。壊すなよ。とね」

若菜「それ知ってて、そのコンパス使ってたんですか?」

私「そういう子供だったんだよ。妹には、悪かったけど、妹には、おじいちゃんの部品の沢山あるコンパスを、使わせていた」

若菜「悪いお兄ちゃんですね」

私「私が持ってたから、傷ひとつない」

若菜「今でもあるんですか?」

私「ほらっ、

ね」

麻友「太郎さん。確かに、期待をされているのも、分かってたし、それに応えることも、してた。その中学の技術の時間に、コンパスと定規で、正五角形を作図する方法を、習ったのね」

私「一応、これで、正五角形を描けるけど、ほんの少し誤差がある、というようなことは、聞いた。今計算しているところが、写真のコンパスの下に書かれているが、何が誤差なのか、ちょっと、分からない」

若菜「正五角形ということは、黄金比のはずですから、{\displaystyle 1~ :~ \frac{1+\sqrt{5}}{2}} で、お父さんの式にも、{\displaystyle \sqrt{5}} が現れてますから、大丈夫なんじゃないですか?」

私「そうなのかなあ?」

若菜「さて、昨日の話が、出たところで、昨日の続きを、やりましょう」



私「本文を、読み込もう」

結弦「ちょっと、今の話から、頭を切り換えるのが、追い付かない。そもそも、なんで、コンパスと定規だったの?」

私「これは、今みたいに、CAD なんかが使える時代には、意味がないんだよ。要するに、図面を描くのに、定規とコンパス以外、信頼できるツールがない時代、正五角形が、作図できるかどうかが、問題だった。正三角形は描ける。正四角形は、描ける。正五角形は描ける。正六角形は描ける。でも、正七角形は、定規とコンパスで、作図できないということが、分かっている」

麻友「素数だと、駄目なの?」

若菜「5は素数ですが」

私「ぱっぱっぱっ」

若菜「どうして、その本だって、分かるんですか?」

私「図書館に行けば、分かる。と言われても、自分の手の届くところに置いておこうとするのは、電光石火でその本が、見られなければ、駄目だからだ」

結弦「『初等整数論講義』と、『代数学講義』

の2冊」

私「2より大きい素数 {p} で、正 {p} 角形の作図が可能なのは、 {p=2^m+1} と整数、{m} で、表されるとき。だけど、{2^m+1}素数になるのは、{m} が、{2} のベキのときのみ。{2^1=2}{2^2=4}{2^3=8}{2^4=16}、だから、

{2^2+1=5} で、確かに正五角形は、作図できる。

{2^4+1=17} と、17まで、飛び、7、11、13は、作図できないと、考察できる。そして、正17角形こそ、1796年3月30日の朝、19歳のガウスが、目ざめて臥床(がしょう)から起き出ようとする刹那(せつな)に、作図できるという証明を思い付いたのであり、ガウスは、これをもって、数学者になる決心をしたという。実は、ガウスは、文学青年で、本当は、詩人になっていたかも知れないのだ。数学者になってくれて、本当に有り難い」

結弦「文献の大切さは、分かった。論理学、始めていいよ」

私「それでは、復習から、

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 そして,このように定義すれば,さらに日常語による推論についても同様に考えることができる.たとえば {\S 1} の冒頭の

{1+2}{4} であるなら,雪は黒い.

{1+2}{4} である.
{\rule{7cm}{0.3mm}}
ゆえに,雪は黒い.

という推論を例にとるなら,この推論の「正しさ」は次のように示される.まず適当な要素命題記号を用いてこの推論を記号化すると,たとえば

{p_1 \Rightarrow p_2 ,~p_1 \longrightarrow p_2}

という推論式が得られる.そこで,この推論式に対応する論理式をもとめれば,

{((p_1 \Rightarrow p_2) \wedge p_1) \Rightarrow p_2}

という論理式が得られ、これはトートロジーである.したがって,もとの推論は正しいというわけである.{\S 1 } の冒頭で,推論の正しさは,推論を構成している個々の命題の内容的な真偽にではなく,推論が全体としてもつ「型」に依存していると述べられたが,どのような型が「真なる」型であるかは,今の場合、トートロジーという概念により決定されているわけである.


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               (『現代論理学』10ページから)

麻友「『適当な要素命題記号を用いて』って、部分が、分からない」

私「無理だよねー。いきなりこんなの。

{p_1}  {1+2}{4} である。

{p_2}  雪が黒い。

と、するということだよ」

若菜「そうすると、

{p_1 \Rightarrow p_2} は、{1+2}{4} であるなら、雪は黒い。

ということ」

結弦「当然、

{p_1 \Rightarrow p_2, p_1} は、 {1+2}{4} であるなら、雪は黒い。であり、{1+2}{4} である。

だな」

麻友「美味しいところを、ゴメンネ。

{p_1 \Rightarrow p_2, p_1 \longrightarrow p_2} は、{1+2}{4} であるなら、雪は黒い。であり、{1+2}{4} である。よって、雪は黒い。

という推論を、したということね。

でも、{\Rightarrow} と、{\longrightarrow} は、どう使い分けられているの?」

私「実は、ここまでのところでは、{\longrightarrow} は、定義されていない。これが、『よって』などと呼んで良いものかどうか、分かってないんだ」

麻友「じゃあ、{\longrightarrow} は、どう定義するの?」

私「10ページの前半で、


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{~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~A_1,A_2,\cdots ,A_n \longrightarrow B}   (1)

そこで,こうした推論について「論理的に真」ということを定義するために,それに次のような論理式を対応させる.

{~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~(A_1 \wedge A_2 \wedge \cdots \wedge A_n) \Rightarrow B}   (2)


*******************************


という話があったのを、思い出して欲しい」

麻友「そうすると、

{p_1 \Rightarrow p_2, p_1 \longrightarrow p_2}

は、

{((p_1 \Rightarrow p_2) \wedge p_1) \Rightarrow p_2}

と、ひとつの論理式になる」

若菜「でも、変だと思いません? {\Rightarrow} は、真偽表で、定義されたものでした。でも、{\longrightarrow} は、『よって』という推論の式のものでした。それを、同じものにしてしまうなんて」

私「矢印が出て来るたびに、悩んだ。この矢印のジレンマを解消してくれたのは、ブルバキだった。{\vee\neg} を、{\Rightarrow} と表す。つまり、{(\neg A)\vee B} を、{A \Rightarrow B} と表すと、定義して以来、一度として、他の矢印を、使わない。結局、ひとつで良かったのだと、安心した。ただ、他の本を読むときは、その本に従わねばならない」

結弦「この場合は、 {\longrightarrow} は、{\Rightarrow} で、定義されているということ? それで、これが、正しいというのは、どういうときなの?」

麻友「トートロジーでしょ」

若菜「あっ、真偽表か

{((p_1 \Rightarrow p_2) \wedge p_1) \Rightarrow p_2}
{~~~1~~~~~~~~1}

とやって、

{((p_1 \Rightarrow p_2) \wedge p_1) \Rightarrow p_2}
{~~~1~~~~~~~~1}
{~~~1~~~~~~~~0}
{~~~0~~~~~~~~1}
{~~~0~~~~~~~~0}

で、この後どうすれば、いいのかしら?」

麻友「他にも、{p_1} や、{p_2} がある。

{((p_1 \Rightarrow p_2) \wedge p_1) \Rightarrow p_2}
{~~~1~~~~~~~~1~~~~~~~~1}
{~~~1~~~~~~~~0~~~~~~~~1}
{~~~0~~~~~~~~1~~~~~~~~0}
{~~~0~~~~~~~~0~~~~~~~~0}

とできる」

若菜「あっ、そうか、

{((p_1 \Rightarrow p_2) \wedge p_1) \Rightarrow p_2}
{~~~1~~~~~~~~1~~~~~~~~1~~~~~~~~~~~1}
{~~~1~~~~~~~~0~~~~~~~~1~~~~~~~~~~~0}
{~~~0~~~~~~~~1~~~~~~~~0~~~~~~~~~~~1}
{~~~0~~~~~~~~0~~~~~~~~0~~~~~~~~~~~0}

なんだ」

結弦「ここから、論理記号の下に、◯✕付け始める。

{((p_1 \Rightarrow p_2) \wedge p_1) \Rightarrow p_2}
{~~~1~~~1~~~~1~~~~~~~~1~~~~~~~~~1}
{~~~1~~~0~~~~0~~~~~~~~1~~~~~~~~~0}
{~~~0~~~1~~~~1~~~~~~~~0~~~~~~~~~1}
{~~~0~~~1~~~~0~~~~~~~~0~~~~~~~~~0}

恐ろしい」

麻友「どうかな。

{((p_1 \Rightarrow p_2) \wedge p_1) \Rightarrow p_2}
{~~~1~~~1~~~~1~~~~1~~~1~~~~~~~~~1}
{~~~1~~~0~~~~0~~~~0~~~1~~~~~~~~~0}
{~~~0~~~1~~~~1~~~~0~~~0~~~~~~~~~1}
{~~~0~~~1~~~~0~~~~0~~~0~~~~~~~~~0}

うん」

若菜「ロシアンルーレットなんて、心臓に悪いですよ。

{((p_1 \Rightarrow p_2) \wedge p_1) \Rightarrow p_2}
{~~~1~~~1~~~~1~~~~1~~~1~~~1~~~1}
{~~~1~~~0~~~~0~~~~0~~~1~~~1~~~0}
{~~~0~~~1~~~~1~~~~0~~~0~~~1~~~1}
{~~~0~~~1~~~~0~~~~0~~~0~~~1~~~0}
{~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~\uparrow}ココ

うわっ。前件が真で、後件も真なら、{\Rightarrow} は、真。一方、前件が偽(つまり、{0} )なら、常に真(つまり、{1} )だから、全部、『ココ』のところに、{1} が、並んで、トートロジーです」

私「協力して、よくやったな」

結弦「お父さんは、黙々と、数字入れて行ってるの?」

私「絶対麻友さんに、説明するんだ。と、思いながら、計算しているが、このときも、どうしてもトートロジーにならず、3回も、4回も、見直した」

若菜「絶対、自分なら、正しい答えを、出せるって、自信あるんですか?」

私「分からなかったら、麻友さんに、泣きつこうと思ってる」

若菜「そういえば、『これは、なぜか、こうなるんだ』みたいな、口調のときって、ありますね」

麻友「太郎さんは、人間なの。私も、マユユロイドではないし、太郎さんも私のボーイフレンドの人間。間違うことは、あるわ」

若菜「今日は、前回の復習が、できましたし、名曲中の名曲お母さんのソロ曲『サヨナラの橋』が、かかっているのですから、これで終わりにしませんか?」

私「よし。『推論の正しさは、それに対応する論理式が、トートロジーであることで、定まる』というの、分かったな?」

麻友・若菜・結弦「はーい」

麻友「おやすみ」

若菜・結弦「おやすみなさーい」

私「おやすみ」

 現在2022年5月8日20時36分である。おしまい。