1から始める数学

数字の1を定義するところから始めて現代数学を築きます。ブログの先頭に戻りたいときは、表題のロゴをクリックして下さい。

0から始める数学(その5)

 現在2020年11月15日22時05分である。(この投稿は、ほぼ9521字)

私「以前から、1から0を作った、ドラえもんのブログの『有理数体(その3)』までのまとめを、いずれすると言いながら、延び延びになってたね」

麻友「あれは、分からないわよ」

私「でも、ちょっとずつ切り崩せば、分からないことは、ないんだ。見返すとき、どこだったかなあと探すのは大変だから、ここに、纏めた。ただ、9200字くらいあるから、一気に全部読まなくていい」

麻友「そうなの?」

私「今年の6月になってから気付いたんだけど、色々ある数学の立場で、武器を余り持たない数学の立場では、その数学が矛盾する可能性は低い。その代わり、面白い定理は証明できない。一方、強力な武器を持つ数学では、面白い定理が一杯証明できる。数学者一人一人が、自分の数学を、選ぶんだ。私は、今まで、武器がほとんどなくても証明できる定理に興味があった。それこそ、本当の定理だと思っていたんだ。でも、強い武器を持って、今まで想像もしなかった、奇抜な定理を証明する方が、数学を楽しむことになると、感じたんだ。具体的に言うと、うるさいことを言う、ヒルベルト形式主義や有限の立場、あるいは直観主義よりも、コーエンのフォーシングのような、革命を起こす方が、私の数学でやりたいことに、ぴったりだと、感じたんだ」

麻友「ほとんど、分からないけど」

私「ひと言で言うなら、数学を顕微鏡で、細かく調べるより、今まで太陽系しか知らなかったのを、銀河系まで、調べ始めるように、望遠鏡で宇宙を見る方が、私に一番合っている数学だと、気付いたんだ」

麻友「じゃあ、ZFとか、BGとか、やらないの?」

私「いや、ZFCや、BGを、フルに使って、数学を進めたい」


麻友「私、分かるかしら?」

私「そのとき、そのときの、私の本音を、飾らず、書いていく。麻友さんが、『ここが、知りたいのに』というところを、すくうように、書いていくよ」

麻友「最初は、どこから?」

私「空集合を、『0』とするという話からだね」

麻友「1から0を作って、0というものが、本当に存在するということが分かった上で、空集合を0と改めて定めて、『0から始める数学』を、築くわけね。そして、心には、『1から始める数学』だという思いを、秘めているのね。見ようによっては、詩人みたいね」

私「『あの人は、数学者だから』というのは、『あの人は、詩人だから』というのに近い、いたわりだと、確率論の権威だった伊藤清(いとう きよし)という人が言ってた。当たらずといえども遠からずだね」

麻友「この後は、急いで読まなくて、いいのね」

私「うん」

麻友「じゃ、おやすみ」

私「おやすみ」

 現在2020年11月15日23時48分である。おしまい。



 以下、『女の人のところへ来たドラえもん』より、引用。

 定義 18

 ものの集まりである『集合』という言葉を定義する。

 集合は、今は説明できないが、22個ほどの公理(約束事)を満たすものとして、定義される。

 まだ、証明できないが、あるものの集まりが、集合であることが分かっているとき、そのものの集まりのうちの集まっているものの一部だけを集めた集まりは、やっぱり集合になるということが、後に証明される。

 だから、集合の一部分は、集合だと知っていると役に立つ。

 この集合の一部分は、元の集合の部分集合という。

 こういう、集合という言葉を使うことを、認める。

 定義 18 終わり




 定義 19

 自然数{1}を、袋に入れたものを想像して、それを、

{ \{ 1 \} }

と、表す。

 これが、集合だと認める。

 これを、{1}を要素とする集合と呼ぶ。

 定義 19 終わり




 定義 20

 自然数{A}{B}があったとき、{A}{B}を袋に入れたところを想像し、それを、

{ \{ A,B \} }

と表す。

 これが、集合だと、認める。

 これを、{A}{B}を要素とする集合と呼ぶ。

 定義 20 終わり



 例 21

 以下のものは、集合である。

{ \{ 1+1 \} }

{ \{ 1,1+1 \} }

{ \{ 1+1,1+1+1 \} }

{ \{ 1,1 \} }

{ \{ 1,1+1+1+1+1 \} }

 例 21 終わり



 公理 22(I.集合になるための十分条件

{\forall X \forall Y ( X \in Y \Longrightarrow m(X))}

何かの要素になれば、集合である。

 公理 22 終わり


 定義 23と、定義 24 は、今はあまり関係ない。







 定義 23

 集合{R}が、空集合でないとする。

 このとき、{R}の2つの要素、{x,y}に対し、{R}の新しい要素を決める約束事が決まっていて、その新しい要素を、{x+y}と、表すことになっていたとしよう。

 次に、{R}の2つの要素、{x,y}に対し、{R}の新しい要素を決める先ほどとは違う約束事が決まっていて、その新しい要素を、今回は、{xy}と、表すことになっていたとしよう。

 さて、上のような約束事を演算(えんざん)といい、{+}の方の演算を、加法(かほう)といい、もう一方を、乗法(じょうほう)とよぶ。

 そして、演算が、次の3条件を満たすような集合{R}を、環(かん)であるという。環をつくる。環をなす。ともいう。

(1){R}は、加法に関し、可換群(かかんぐん)である。

    可換群とは、次のA,B,C,Dが成り立つもののことである。

    A.{(x+y)+z=x+(y+z) \ \ \ \ (\forall x,y,z \in R)}(加法の結合法則

    B.{Rの要素zで、任意のxに対し、x+z=x}
        {となるものが、存在する。}(零元の存在)

    C.{Rの任意の要素xに対し、上で存在するといわれているzについて、}
        {x+x'=zとなるようなx'が、存在する。}(加法の逆元の存在)

    D.{x+y=y+x \ \ \ \ (\forall x,y \in R)}(加法の交換法則)


(2)乗法に関する結合法則が、成り立つ。すなわち、

    {(xy)z=x(yz) \ \ \ \ (\forall x,y,z \in R)}

   が成り立つ。


(3)加法と乗法の間に分配法則が、成り立つ。すなわち、

    {x(y+z)=xy+xz \ ,\ (x+y)z=xz+yz \ \ \ \ (\forall x,y,z \in R)}

   が成り立つ。

 以上です。

 定義 23 終わり




 定義 24  秒

 私達は、後に改めて定めるまで、時間を計る基準として、渡辺麻友スマホの時計に表示される時間を用いる。

 基本的に、単位は、秒{(\mathrm{s})}であり、分{(\mathrm{m})}や、時間{(\mathrm{h})}も、用いる。

 定義 24 終わり





『整数環(その3)』より



 定理 25    足し算の結合法則

 自然数{A,B,C} について、

{(A+B)+C=A+(B+C)}

が成り立つ。

 証明

 今、3つの自然数を、次のようなものとしよう。

{A=1+1+1}

{B=1+1+1+1}

{C=1+1}

 この時、

{A+B+C}

として、

{(1+1+1)+(1+1+1+1)+(1+1)=1+1+1+1+1+1+1+1+1}

を結果として与えることに定義すると、これは、

{(A+B)+C= \bigl((1+1+1)+(1+1+1+1)\bigr)+(1+1)}

と、同じであり、

{A+(B+C)=(1+1+1)+\bigl((1+1+1+1)+(1+1)\bigr)}

とも同じである。

 ここで、同じであるとは、つまり、1の並んでいる絵が、模様として同じであるということである。

 ただし、括弧『()』は、見る人のためにつけてあるだけで、自然数の絵としては、そんなものはないとする。

 そうすると、

{(A+B)+C=A+(B+C)}

であり、足し算の結合法則が、成り立つ。

 そこで、以後、

{A+B+C=(A+B)+C=A+(B+C)}

を、{A+B+C}の定義とする。

 定理 25 証明終わり

 証明できているのだろうかと、余り悩まないで。


 現在2020年11月15日23時37分である。おしまい。



 定義 26 座標

 {A,B} を自然数とするとき、

 {(A,B)}

のように、括弧(かっこ)でくくって、2つの自然数を書いたものを、自然数に値(あたい)をとる座標(ざひょう)という。

 {(A,B)=(C,D)}

の時には、

 {A=C かつ B=D}

が成り立っているものと、約束する。

 定義 26 終わり



 公理 27

 自然数全部の集まり、

{\mathbb{N}=\{X|\forall Y(1 \in Y \wedge \forall Z(Z \in Y \Rightarrow Z+1 \in Y) \Rightarrow X \in Y) \} }

は、集合である。

 公理 27 終わり


 1が入っていて、Zが入ってれば、Z+1も入っていて、そういうものだけなのは、自然数の集合だけ。

 そして、その自然数が、集合になると、公理で定める。


 ただし、私達の自然数というとき、{\mathbb{N}} と表したときは、0は含まないとする。自然数を、{\omega} (オメガ)と表したときは、{0} を含むとしよう(正確には、集合論では空集合 {\emptyset}{0} と定義し、{\omega} に入っていると、する)。集合論では、自然数の集合を、{\omega} と表すのは、一般的である。私達は、このように、使い分けよう。



 注 上のように、{\mathbb{N}} を、{0} が入らないものと、前回、定義したが、大学の数学では、{0}自然数に含めるのは、常識であり、1から始める数学の私達も、自然数にゼロを含めるのが、いずれ当然になる。初めは、煩わしいかも知れないが、そこで用いられている自然数という言葉が、ゼロを含むかどうか、常に意識していて欲しい。




 定義 28 正の整数

 {n \in \mathbb{N}} を、自然数とするとき、集合、

{\{(X+n,X)|X \in \mathbb{N}\}}

を、整数の {n} と呼び、混乱の恐れのないときは、これも、{n} と書く。

 定義 28 終わり



 定義 29 {\mathbb{N}} の直積(ちょくせき)

{\mathbb{N \times N}:= \{(m,n)|m \in \mathbb{N} \wedge n \in \mathbb{N} \} }

と、定義して、左辺を、自然数 {\mathbb{N}} の直積(ちょくせき)という。{\mathbb{N}^2} とも書く。

 定義 29 終わり

『:=』という記号は、右辺によって、左辺を定義する。という記号。

 今後は、これらは、同じものとするよ、という意味だと思って欲しい。



 定義 30 整数のゼロ

 以下の集合を、整数のゼロと呼ぶ。

{0:=\{ (X,X) |X \in \mathbb{N} \}}

 定義 30 終わり



 定義 31 負の整数

 {n \in \mathbb{N}} を、自然数とするとき、集合、

{\{(X,X+n)|X \in \mathbb{N}\}}

を、整数のマイナスエヌと呼び、混乱の恐れのないときは、これを、{-n} と書く。

 定義 31 終わり


 混乱の恐れのないとき、というのは、私達の自然数は、{1+1+1} みたいなものだけであった。

 ところで、ここで定義した、マイナスさんというのは、

{\{(1,1+1+1+1),(1+1,1+1+1+1+1),\cdots \}}

というような、集合である。これが、整数のマイナスさんなのだ。

 ところで、混乱の恐れがないときは、これを、{-(1+1+1)} と、表しますよ。という注意なのである。

 {3} は、{1+1+1} の省略記号だから、{-3} と、書くことも許される。念のため。



 定義 32 整数の加法

 2つの整数、{[(A,B)]} と {[(C,D)]} に対し、それらの和を、

{[(A,B)]+[(C,D)]:=[(A+C,B+D)]}

によって、定義する。これを求める算法を、加法という。

 定義 32 終わり


 これは、実際に試してみないと、実感が湧かないであろう。







 定義 33 マイナス

 整数、{n=[(A,B)]} に対し、

{-n:=[(B,A)]}

によって、マイナスエヌを定義する。

 定義 33 終わり




 定義 34 減法

 整数 {m,n} に対し、

{m-n:=m+(-n)}

を、エム引くエヌといい、この演算を減法という。引き算ともいう。

 定義 34 終わり




 この定義を、もっと分かり易いものに、そのうち変えるね。

 定義 35  乗法

 {A,B} を、自然数とする。

 {B=1} のとき、

 {A \times B=A \times 1=A}

と、定める。

 次に、自然数{C} を用いて、

{B=C+1} と、表されるとき、

 {A \times B =A \times (C+1) =A \times C+A}

と、定める。

 自然数は、{1} をいくつかつなぎ合わせたものであったから、{B} は、どちらかに分類される。

 そして、{1} の個数は有限個であるから、ある回数下の場合が起こった後は、{B} は、{1} になり、{A \times B}は、ある個数、{1} の並んだものとなる。

 これを、{A,B} の積という。

 そして、積を求める算法を、かけ算、または、乗法という。

 定義 35 終わり




 定理 36

 {n} を、自然数とするとき、

{10^n=1\underbrace{0 \cdots 0}_{n}}

{10^{-n}=\underbrace{0.0 \cdots 0}_{n}1}

が、成り立つ。

 証明

 小数点を実際に動かすことで分かる。

 定理 36 証明終わり


{10^{-3}=\underbrace{0.00}_{3}1} とか、やったね。



 以上で、『整数環』の連載の中の、定義、公理、定理は、終わりである。




 定義 37  自然数の乗法 (定義35改)

{A=1+1+1+1,B=1+1+1} とするとき、{A \times B} を次のように定義する。

{A \times B =(1+1+1+1)+(1+1+1+1)+(1+1+1+1)}
{~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~\uparrow ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~\uparrow ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~\uparrow}
{~~~~~~~B~~~=~~~~~~~~~1~~~~~~~~~~~~+~~~~~~~~~~~1~~~~~~~~~~~~~~+~~~~~~~~~~~1}

 つまり、{B} の3つの {1} を、{A}{1+1+1+1} で、置き換えたんだ。

 代入したと言ってもよい。

 定義 37 終わり




 定理 38  乗法の交換法則

 {m,n}自然数とするとき、{m \times n=n \times m} が、成り立つ。



という定理だ。

 さて、これを、証明するとき、次のように、やる。


 第1段階

 任意の自然数{m} について、{n=1} のとき、成り立つことを、証明する。

{m \times n=n \times m} で、左辺は {m \times 1} であるから、{m}{1} に代入して、

{m \times 1 = m}
{~~~~~~~~~~~~~~~\uparrow}
{~~~~~~~~1=1}


 一方右辺は、{1 \times m} であるから、{1} を、{m} 個の {1} に代入して、

{1 \times m = \overbrace{1+ \cdots +1}^m}
{~~~~~~~~~~~~~~~\uparrow~~~~~~~~~~~~~\uparrow}
{~~~~~~~m=\underbrace{1+ \cdots +1}_m}


である。従って、両辺が等しくて、{n=1} のとき、成り立つ。

「なんか、当たり前の気がするけど」

 いや、いつも、第1段階は、こうなんだ。


 第2段階

 任意の自然数{m} について、自然数 {k} 以下のすべての自然数 {n} について、定理が成り立つとして、{n=k+1} でも定理が成り立つことを、証明する。

 仮定より、{m \times k=k \times m} である。

 {m \times (k+1) =(k+1) \times m} を、証明したい。

 さて、左辺を計算して、右辺を導出できれば良いが、途中で、行き詰まる。

 こういうときは、右辺の方から、お迎えに行った方が、良いこともある。

{(k+1) \times m = \overbrace{(k+1)+ \cdots +(k+1)}^m}
{~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~\uparrow~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~\uparrow}  {m} 個の {1}{(k+1)} を代入。
{~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~m= \underbrace{1+ \cdots \cdots \cdots +1}_m}  つまり {(k+1)}{m} 個。

 右辺を整理して、

{~~~~~~~=k \times m +m}

 帰納法の仮定より、

{~~~~~~=m \times k + m}

{~~~~~~~= \overbrace{m+ \cdots +m}^k +m}
{~~~~~~~~~~~~~\uparrow~~~~~~~~~~~~~\uparrow~~~~ \uparrow}  {m \times k}{k} 個の {1}{m} を代入したと捉える。
{k+1= \underbrace{1+ \cdots +1}_k~+1}


{~~~~~~~~~= \overbrace{m+ \cdots +m}^{k+1}}
{~~~~~~~~~~~~~~\uparrow~~~~~~~~~~~~~~\uparrow}  仲間はずれの、{m} を加えて、まとめる。
{k+1= \underbrace{1+~ \cdots ~+1}_{k+1}}  {m}{k+1} 個と捉える。


{~~~~~=m \times (k+1)}

 以上で、求めたかった式が得られた。

「うっ、結構難しいわね」

 ひとつひとつの式の変形が、ギャップのあるものに感じられるかも知れないけど、これくらいに、付いてこられないと、この先、厳しい。

「太郎さん、意欲のある中学生でも読めるようにすると言っておきながら、突き放すのね」

 ある水準まで、読者のレヴェルを上げないと、面白い話が書けないんだ。

「私は、『フーリエの冒険』だって、難しいレヴェルよ」

 難しい部分は、何度も説明するよ。

 さて、


 第3段階

 以上により、全ての自然数 {n} に対して、{m \times n=n \times m} が、成立する。{m} も、任意だったから、任意の自然数 {m,n} について、乗法の交換法則が、成り立つことが、証明された。

   証明終わり


 この投稿は、途中に終了時刻が、書いてある。おしまい。